投稿日:2021.10.25 最終更新日:2024.08.21
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足立 賢亮 税理士
2019年に国内大手税理士法人から税理士法人アイユーコンサルティングに入社。 2023年7月、社内初のエキスパート職に就任。 これまで手掛けた相続税申告件数は累計450件に上り、相続、法人個人の顧問、組織再編を伴う資本政策等、幅広い業務に対応している。 丁寧かつスピーディーな対応力を強みに実務で活躍する一方で、関東エリアでの営業拡大を目指し、セミナー、勉強会、相談会、メディア掲載など、多数の営業活動実績も有している。 「会社の事業承継、個人の遺産承継は人生において数少ない重要な局面である」を念頭に、経営者、遺族、納税者の立場やニーズに配慮し、ベストな提案をするため幅広くサポートしている。
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10年以内の二次相続時は相次相続控除を利用できる
相次相続控除は、10年以内に続けて相続が起こったときに相続税を軽減できる特例です。短期間に相続が相次いだ結果、同じ財産に対して課税が重複しないように設けられています。ここでは「一次相続」「二次相続」という用語の意味や適用要件を解説します。
一次相続と二次相続とは
一般的に、相続は配偶者または両親の死亡によって生じます。例えば、両親どちらかの死亡によって「配偶者と子」が相続人になったとしましょう。これを「一次相続」と呼びます。
その3年後、残された配偶者も死亡し、「子」が再び相続人になったとします。子からすれば、両親の財産を再び相続するので「二次相続」となります。同じ理屈で、祖父または祖母が亡くなって両親の一方が相続人になり、その方が亡くなって相続が発生した場合も、それぞれを「一次相続」「二次相続」と定義します。
相次相続控除の適用要件
二次相続での納税を軽減できる相次相続控除は、以下3つの全ての要件を満たす場合に適用できます。
1.被相続人の相続人であること
2.前回の相続発生が10年以内であり、今回の被相続人が財産を取得していること
3.その相続により取得した財産について、今回の被相続人に対し相続税が課税されたこと
「3」は特に盲点かもしれません。例えば被相続人が一次相続で「配偶者の税額軽減」を適用し、納税していないケースでは相次相続控除は適用外となります。
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相次相続控除の計算方法と事例
節税される範囲を知るためには、相次相続控除の計算方法を理解しておく必要があります。非常に複雑ですが、計算式に税額や財産額を当てはめることで大枠は算出可能です。具体的な事例を使って解説しますので、ご自身の概算額を把握しておくとよいでしょう。
計算方法
相次相続控除額は、一次相続から二次相続間までの期間が短いほど控除額が大きくなります。実際の算出式は以下の通りです。
相似相続控除の額= A × C /(BーA)× D / C ×(10-E)/10
(注)C/(B-A)が100/100を超える場合は100/100とする
A:二次相続の被相続人が一次相続で課された相続税額
B:二次相続の被相続人が一次相続で取得した財産価額
C:二次相続の相続財産の合計額
D:相次相続控除を受ける法定相続人が二次相続で取得する財産価額
E:一次相続から二次相続までの経過年数(1年未満は切り捨て)
具体例
・父が2016年1月10日に死亡(一次相続)。当時の相続人である母が1,600万円を納付
・その母が2021年3月20日に死亡(二次相続)し、合計8,000万円を長男と長女で折半
上記をAからEをあてはめます。
A:母が父の相続で課された相続税額=1,600万円
B:母が一次相続で取得した財産額=1億円
C:母(二次相続)の相続財産の合計額=8,000万円
D:長男・長女が取得する財産額=4000万円
E:一次相続から二次相続までの経過年数=5年(1年未満は切り捨て)
1,600万円×8,000万円/(1億円-1,600万)×4,000万円/8,000万円×(10-5)/10=約380万円
結果、長男と長女は380万円ずつ相続税額を控除できます。
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相次相続控除を適用する際に注意が必要なケース
自ら相続手続きに携わるのは初めてという方も多いのではないでしょうか。手続きにあたっては、さまざまな疑問点もあることでしょう。ここでは、相次相続控除に関してよくある疑問点と注意が必要なケースについて解説します。
遺産分割が完了していない場合
兄弟だけが相続人になることの多い二次相続では、家族間の遺産分割協議が難航することがあります。相次相続控除は、遺産分割が終了していなくても適用可能です。遺産分割が完了していなければ、法定相続分で財産を取得したと想定して控除を計算します。
適用額を自分で決めたい場合
一次相続の納税額が多ければ、相次相続による控除額も多くなります。二次相続における遺産分割割合が相続人ごとに異なると控除の適用額にも不公平感が生じるかもしれません。しかし、相次相続控除は決められた計算式で導き出すことが必要です。任意で決められるものではありません。
一次相続で相続税を納めていない場合
相次相続控除は、被相続人が過去10年以内に他の相続で財産を取得し、相続税を納めていた場合にのみ適用できる制度です。したがって、一次相続で配偶者の税額軽減などにより相続税を納めていなければ、二次相続で納税を課されても相次相続控除を適用できません。
修正申告や更正の請求で適用したい場合
相次相続控除には、制度の適用を受けるためにあらかじめ意思表示する「当初申告要件」がありません。つまり、修正申告や更正の請求(税額が過大であった場合の減額申請)でも適用できます。
相続税申告の際に相次相続控除の適用を失念していても、当初の申告期限から5年以内であれば、更正の請求をすることにより適用可能です。
三次相続が起きた場合
一次、二次相続の後に三次相続が起こった場合、二次相続と三次相続で相次相続控除の適用要件を満たしていれば控除を受けられます。三次相続の場合は、二次相続で納めた相続税が相次相続控除の対象になります。基本的な考えは同じなので、相次相続控除の仕組みを把握していれば混乱は少ないでしょう。
同時に亡くなった場合
不幸にも交通事故などで両親が同時に亡くなった場合は、相次相続控除を受けられません。両親のどちらも一次相続で相続を取得していなければ、相続税も納めていないためです。酷な決まりかもしれませんが、相次相続控除は適用要件を全て満たさない限り適用できません。
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相次相続控除の添付書類や申告方法
相次相続控除の適用を受けるためには、相続税申告書の「第7表:相次相続控除額の計算書」を作成して提出します。また、一次相続の際に提出した相続税申告書の一部書類の写しが必要です。相次相続控除の申告方法と添付書類を解説します。
必要な添付書類
一次相続(前回の相続)で提出した相続税申告書に含まれる以下の書類の写しを添付します。
・第1表(相続税の申告書)
・第11表(相続税が係る財産の明細書)
・第11表の2(相続時精算課税適用財産の明細書)
・第14表(純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額の明細書)
・第15表(相続財産の種類別価額表)
第11表の2は、相続時精算課税適用財産がない場合不要です。また第14表は、相続開始以前3年間の贈与財産等がない場合は必要ありません。
申告時期や申告場所
相続税申告時に相次相続控除も併せて申告しましょう。期限は相続開始日の翌日から10か月以内です。例えば、10月20日に亡くなった場合、翌年の8月20日が期限になります。当日が土日祝日であればその翌日です。
相続税申告書の提出先は、専担部署(センター)へ郵送するのが基本になっています。送付日と記録を残すために特定記録で送付するとよいでしょう。もちろん、所轄する税務署窓口への提出も可能です。
申告に遅れた場合
相続税の申告期限に間に合わない場合は、以下のペナルティーが科される恐れがあります。
1.延滞税
期限の翌日から納付日までの日数に応じて延滞税が課されます。
2.過少申告加算税
税金を少なく申告した場合に課されます。
3.無申告加算税
正当な理由がなく期限内に申告しなかった場合に課されます。
4.重加算税
財産を隠蔽あるいは書類を偽装した場合に課されます。申告書が未提出の場合はもちろん、提出済みでも隠蔽や偽装があれば課税されます。
5.一部の特例を使えなくなる
「期限内の申告」が適用要件になっている特例を使えなくなります。
ペナルティーを受けない対策のひとつとして、相続財産が確定していないなどの理由で遅れそうなときは、多めになるように概算で申告して納付することです。財産が確定した後、更生の請求をすれば多めに収めた分を還付してもらえます。
とはいえ、一度申告すると後から修正できない事項もあるので、詳しいことは税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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相次相続控除以外に利用できる控除や特例
相続にあたって利用できる控除や特例は他にもあります。当面の税額を軽減するだけでなく、将来予想される相続までを考慮して手続きに臨みましょう。税理士に相談する際は、財産の状況や家族構成をまとめて提示することで手続きがスムーズに進みます。
配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減とは、配偶者が取得した遺産額が「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い額まで無税になる制度です。対象になるのは民法の規定による配偶者であり、いわゆる内縁の妻や夫は対象になりません。その他、相続税申告書を提出することや、遺産を隠蔽していないことなどが適用要件です。
なお、使い方によっては、一次相続と二次相続で子が納める相続税の総額が、配偶者の税額軽減の適用で多くなってしまうこともあります。優遇された制度ではありますが、よく検討した上で使いましょう。
未成年者控除
未成年者控除の適用要件は以下の通りです。
・財産の取得時に日本国内に住所があること
・財産の取得時に18歳未満であること
・財産を取得した方が法定相続人であること
控除は「(18歳-相続したときの年齢)×10万円」で計算します。控除が相続税額よりも大きい場合、残った額は未成年者の扶養義務者である相続人の税額から差し引けます。
障害者控除
障害者控除の適用要件は以下の通りです。
・財産の取得時に日本国内に住所があること
・財産の取得時に障害者であること
・財産を取得した方が法定相続人であること
控除は「(85歳-相続開始時の年齢)×10万円(特別障害者においては20万円))で計算します。
相続税申告書の第6表に記載し、障害者手帳のコピーまたは医師の診断書を添付して申告しましょう。未成年者控除と同じく、控除が相続税額よりも大きい場合は、残った額を扶養義務者である相続人の税額から差し引けます。
外国税額控除
外国税額控除は、海外に相続財産がある場合、日本と海外で二重課税を避けるための特例です。適用要件は、以下の条件を満たす同時に満たす方です。
・相続または遺贈によって日本国外の財産を相続した方
・外国において、日本国外の財産に「相続税に相当する税」が課された方
控除が次に通りで、1.2のいずれか少ないほうです。
1.外国で納めた「相続税に相当する税」
2.相続税の額×海外にある財産の額/相続人の相続財産の額
小規模宅地等の特例
被相続人の「居住用・事業用に供されていた宅地等」を相続する場合、小規模宅地等の特例を適用することで大幅に減税できる可能性があります。適用要件の概要は以下の通りです。
・故人や生計を一にする親族が住んでいた宅地等を配偶者が相続する
・同居の親族が相続した宅地等に住み続ける
・生計を一にする親族が相続した宅地等に住み続ける
・相続開始の3年以上前からその宅地等で事業を営んでいる
・故人がその宅地等で営んでいた事業を相続人が引き継ぎ申告期限まで継続する
亡くなった方が事業に使っていた土地やアパートなど、不動産賃貸業に使っていた宅地等も小規模宅地等の特例対象です。また、宅地等の種類ごとに上限面積と減額率が決まっています。
種類 | 使用例 | 上限面積 | 減額割合 |
---|---|---|---|
特定居住用宅地等 | 自宅 | 330平方メートル | 80% |
貸付事業用宅地等 | 事業として不動産貸付けを行っている宅地 | 200平方メートル | 50% |
特定事業用宅地等 | 貸付け以外の事業で使用している宅地 | 400平方メートル | 80% |
特定同族会社事業用宅地等 | 被相続人が経営する企業に貸していた宅地 | 400平方メートル | 80% |
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配偶者の税額軽減を使えば、多くのケースで相続税は発生しません。しかし、両親が10年以内に立て続けに亡くなり二次相続が起こると、一次相続で両親の一方が取得した財産にさらに固有の財産が加わり、子に多額の相続税が課されるケースがあります。
言い換えると、一次相続時に適切に遺産分割すれば、二次相続の負担を軽減できる可能性があるということです。とはいえ、相続税の申告期限はわずか10か月で、その間に謄本等の資料集めから財産目録の作成、遺産分割協議などやることはたくさんあります。
時間に余裕を持ちつつ、将来を見据えた適切な相続税対策をお考えの方は、ぜひアイユーコンサルティングにお任せください。年間1,000件以上の相続・承継案件を手掛け、お客様の不安や疑問を解決しています。ご家族の構成や遺産の状況などを細かくヒアリングさせていただいた上で、プロの立場から徹底的にサポートいたします。
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まとめ
二次相続が生じた場合、一定の要件を満たせば相次相続控除を適用できます。申告に必要は第7表で、一次相続時に提出した相続税申告書の一部書類の写しが必要です。相続税申告期限は相続開始から10か月で、遅れると延滞税などのペナルティーが科せられるので注意しましょう。
「相次相続控除は適用できるのか」「控除はどれくらいになるのか」など、相続税や手続きの上でお困りの方は、ぜひアイユーコンサルティングにお声掛けください。経験豊富な相続のプロが、節税に向けたサポートをさせていただきます。
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足立 賢亮 税理士
2019年に国内大手税理士法人から税理士法人アイユーコンサルティングに入社。 2023年7月、社内初のエキスパート職に就任。 これまで手掛けた相続税申告件数は累計450件に上り、相続、法人個人の顧問、組織再編を伴う資本政策等、幅広い業務に対応している。 丁寧かつスピーディーな対応力を強みに実務で活躍する一方で、関東エリアでの営業拡大を目指し、セミナー、勉強会、相談会、メディア掲載など、多数の営業活動実績も有している。 「会社の事業承継、個人の遺産承継は人生において数少ない重要な局面である」を念頭に、経営者、遺族、納税者の立場やニーズに配慮し、ベストな提案をするため幅広くサポートしている。
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