投稿日:2021.09.07 最終更新日:2024.07.11
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石塚 由紀 税理士
大学院卒業後、2009年に国内大手税理士法人の東京本社に入社し、26歳で税理士資格を取得。2011年には同税理士法人の福岡事務所に異動し、相続税申告、事業承継コンサルティング、上場企業対応、国際税務等、幅広い業務を経験し、セミナー講師や共著出版なども行う。 2016年に税理士法人アイユーコンサルティングに参画し、強みである資産税の知識を活かして相続・事業承継を中心としたコンサルティングを行う。ご家族の想いを第一に、遺産分割や生前対策のアドバイス、組織再編のご提案などお客様に満足いただける付加価値の高いサービスを提供。 2018年に娘を出産し、現在は仕事と子育ての両立に奮闘中。より広い視野をもち、信頼できる親しみやすい税理士を目指している。
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相続税は「早見表」で素早く確認できる!
相続税の計算は複雑なうえに、「実際にどれくらいかかるのか?」も分かりづらいですよね。
相続税は配偶者や子どもの人数によっても変動しますから、「早見表」を使ってご自身のあてはまるケースにあわせて調査するのが最も簡単です。
相続税に関する早見表は以下の通り。
■「配偶者あり」の場合
相続財産 | 配偶者と子1人 | 配偶者と子2人 | 配偶者と子3人 |
---|---|---|---|
5,000万円 | 40万円 | 10万円 | – |
6,000万円 | 90万円 | 60万円 | 30万円 |
7,000万円 | 160万円 | 113万円 | 80万円 |
8,000万円 | 235万円 | 175万円 | 138万円 |
9,000万円 | 310万円 | 240万円 | 200万円 |
1億円 | 385万円 | 315万円 | 263万円 |
3億円 | 3,460万円 | 2,860万円 | 2,540万円 |
5億円 | 7,605万円 | 6,555万円 | 5,963万円 |
10億円 | 1億9,750万円 | 1億7,810万円 | 1億6,635万円 |
■「配偶者なし」の場合
相続財産 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
---|---|---|---|
5,000万円 | 160万円 | 80万円 | 20万円 |
6,000万円 | 310万円 | 180万円 | 120万円 |
7,000万円 | 480万円 | 320万円 | 220万円 |
8,000万円 | 680万円 | 470万円 | 330万円 |
9,000万円 | 920万円 | 620万円 | 480万円 |
1億円 | 1,220万円 | 770万円 | 630万円 |
3億円 | 9,180万円 | 6,920万円 | 5,460万円 |
5億円 | 1億9,000万円 | 1億5,210万円 | 1億2,980万円 |
10億円 | 4億5,820万円 | 3億9,500万円 | 3億5,000万円 |
上記は「相続人に対する相続税」の早見表ですので、財産の分割割合や種類、相続人の状態によっては、控除が適用されることがあります。
本記事では「相続税の計算方法」をより詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
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知っておきたい前提知識
相続税を計算する際には、基礎的な計算方法や出てくるワードの意味を正しく理解しておく必要があります。
まずは、相続税計算の際に知っておきたい前提知識を解説していきます!
平成27年以降は「基礎控除額」が変更に!
原則として相続財産が「基礎控除額以下」であれば、相続税は発生しません。
これまでの基礎控除額というのは、「(法定相続人数×1,000万円)+5,000万円」、つまり基本控除額5,000万円に加えて、法定相続人数×1,000万円した金額が控除額とされてきました。
しかし平成27年の税制改定により、この基準が引き下げられ「(法定相続人数×600万円)+3,000万円」、つまり基本控除額3,000万円に加えて、法定相続人数×600万円が控除額となるよう変更されたのです。
税制改定における「基礎控除の計算式」
・改正前:(法定相続人数×1,000万円)+5,000万円
・改正後:(法定相続人数×600万円)+3,000万円
税制改正前のイメージから「基礎控除といえば5,000万円」と考えられがちですが、実際には基礎控除額が下がったことにより、課税対象者が倍増しているのです。
「法定相続人が2人、相続財産が4,700万円」の場合
・改正前:(法定相続人2名×1,000万円)+5,000万円=7,000万円
⇒相続財産4,700万円は控除範囲内のため、相続税なし
・改正後:(法定相続人2名×600万円)+3,000万円=4,200万円
⇒相続財産4,700万円との差額「500万円」が課税対象に
下記記事では「基礎控除」の詳しい計算方法について解説していますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください!
関連記事:『相続の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」!』
法定相続人と「相続順位」について
法定相続人とは、相続対象となる親族を指し、その基準は民法によって定められています。
また法定相続人の相続順位は、該当者との関係性によって決定します。
たとえば「配偶者」は常に法定相続人であり、配偶者以外は、相続順位が最も高い順に法定相続人となります。
相続順位と関係性は以下の通りです。
相続順位 | 関係性(死亡等の場合) |
---|---|
常に法定相続人 | 配偶者 |
第1順位 | 子(孫、ひ孫) |
第2順位 | 父母(祖父母、曾祖父母) |
第3順位 | 兄弟・姉妹(甥・姪) |
たとえば、相続人として子や孫がいない場合は「父母」が法定相続人となります。
また以下のような関係性の場合は「子」として含まれます。
相続上「子」とみなす関係
・胎児
・養子(人数制限あり)
・非摘出子(認知が必要)
「代襲相続」について
代襲相続(だいしゅうそうぞく)」とは、被相続人より先に相続人が亡くなっている場合に、被相続人の孫やひ孫、甥・姪などが相続財産を受け継ぐことを指し、相続発生時に法定相続人が亡くなっている場合は、代襲相続人が相続します。
また「直系尊属(父母・祖父母)」が亡くなっている場合は、前の世代に遡って法定相続人が決まりますが、これは代襲相続とは呼びません。
たとえば、相続が発生したときに法定相続人になり得る関係性の方が「配偶者」「父母」「孫」だった場合、法定相続人は配偶者と孫です。
「法定相続人が誰になるか?」を確認するときは、
代襲相続人の存在も忘れずにチェックしよう!
その他、相続で注意が必要なケース
法定相続人を確認する際には、注意が必要なケースもあります。
基礎控除の計算で、法定相続人の数に入れるかどうかもあわせて確認しましょう。
注意が必要なケース
■養子がいる場合
養子も法定相続人に含まれます。
ただし、人数には限りがあり「実子がいる場合は1人、いない場合は2人まで」です。
■相続欠格者がいる場合
一定の理由から、法定相続人の権利を失った方は法定相続人にはなれません。
ただし、相続欠格者がすでに亡くなっていて代襲相続する場合は法定相続人に含みます。
■相続放棄した人がいる場合
相続放棄をすれば、財産を受け継ぐことはありません。
ただし、基礎控除の計算では法定相続人の数に含まれます。
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自分でできる!相続税の計算方法
先に解説した通り、早見表からおおよその相続税は把握できますが、各自で納める正確な金額を出すためには、以下のような計算をもとに算出する必要があります。
ここからは、詳細な相続税の計算方法を解説していきます!
①「相続財産の総額」を確認する
まずは「被相続人の全財産(総額)」を確認しましょう。
ここでは預貯金のようなプラス財産だけでなく、ローンや未払金といったマイナス財産も洗い出し、遺産総額をあわせる必要があります。
洗い出しが必要な財産の種類は以下の通り。
相続財産の種類
・プラスの財産(預貯金、不動産、金融資産等)
・みなし相続財産(生命保険金、死亡退職金等)
・相続開始前3年以内の法定相続人への贈与財産
・相続時精算課税制度を利用した贈与財産
・マイナスの財産(借入金、未払金等)
・非課税財産や葬式費用
借金などの「マイナスの財産」も忘れずに計算しよう!
②「基礎控除」を差し引く
①で算出した相続財産から、基礎控除の計算式「(法定相続人数×600万円)+3,000万円」を使って、基礎控除額を差し引きます。
先にも解説した通り、「相続財産が基礎控除以下」のケースは相続税がかかりません。一方で基礎控除を超えた分の金額には相続税が発生するため、正確な税額を導き出しましょう。
③「相続税の総額」を計算する
遺産総額から基礎控除を差し引いた金額を法定相続分で按分(あんぶん)し、税率をかけて控除額を差し引いたのが各自の「いったんの相続税額」です。
各自のいったんの相続税額を合計すれば、相続税の総額が算出できます。
④「個人の相続税額」を計算する
③で基礎控除を差し引いた金額を法定相続分で按分し、税率をかけて控除額を差し引いたのが個人の納める相続税額となります。
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相続財産で確認すべき『4つ』のポイント!
相続財産を確認する際には、申告すべき財産の漏れや、知識不足によるミスが起こりやすいため注意が必要です。
相続税申告に問題があると「延滞税」や「加算税」といったペナルティが発生してしまうため、必ずミスのないように確認を行いましょう。
ここからは相続財産の確認の際に、チェックすべき『4つ』のポイントを紹介します。
ポイント① 「プラス財産」と「みなし財産」を確認する
相続財産は「被相続人が保有していた全財産」が対象であり、中でも、課税財産になり得るの「がプラス財産」や「みなし相続財産」です。
具体的な内容を把握し、漏れのないように気を付けましょう。
プラス財産
・不動産(土地、建物、居宅、借地権)
・お金(現金、預貯金)
・有価証券(株券、小切手)
・動産(自動車、船舶、宝石、美術品)
・その他(ゴルフ会員権、著作権、損害賠償請求権)
みなし財産
・生命保険金
・死亡退職金
・弔慰金 など
ポイント② 「控除できる財産・費用」を確認する
相続した財産のうち、マイナス財産や葬式費用は控除できるので覚えておきましょう。
マイナス財産や葬式費用に含まれるものの一例は以下の通り。
マイナス財産
・借入金(住宅ローン、カードローン)
・未払金(家賃、医療費、光熱費)
・公租公課(所得税、住民税、国民健康保険料)
・その他(保証債務)
葬儀費用
・遺体や遺骨の移送費用
・通夜や告別式にかかる費用
・火葬や納骨にかかる費用
・お布施や心付けにかかる費用
ポイント③ 「生前贈与」の確認漏れを確認する
相続開始から3年以内に行った「相続人等への贈与財産、相続時精算課税制度を利用した贈与財産」は、相続財産に含まれます。
ただし、すでに贈与時に税金を納めていた場合は、最終的に算出した相続税から控除できます。
また相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、「贈与時の時価」で計算する点に気を付けましょう。
たとえば、「贈与時に2,000万円だった土地の時価が、相続時に5,000万円に上がっていても2,000万円として計算できる」というわけです。
既に贈与税として納めている場合は、「二重課税」とならないよう控除を忘れないようにしよう!
ポイント④ 差し引き可能な「非課税財産」を確認する
財産の中には非課税の対象となる「非課税財産」も存在します。
これらはマイナス財産と同様に、相続財産から差し引くことができるため、事前に確認するようにしましょう。
非課税財産の一例は以下の通り。
非課税財産となるもの
・礼拝に使用するもの:墓地、墓石、仏壇、神棚 など
・公共団体への寄付金:国、地方公共団体、公益事業を運営する法人への寄付金 など
・生命保険金:「法定相続人数×500万円」まで
・死亡退職金:「法定相続人数×500万円」まで
・弔慰金:業務上の死亡の場合…「被相続人の死亡時の普通給与×36ヶ月分」まで
業務以外の死亡の場合…「被相続人の死亡時の普通給与×6か月分」まで
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相続財産が多い場合は「特例・控除」を利用しよう!
相続財産が多額ケースでは、特例や追加控除を受けることで、相続税をなくせるケースがあることも覚えておきましょう。
ここからは、特例や控除の適用条件について解説します。
ケース① 控除額が大きい場合
これは配偶者が相続するケースに限りますが、控除する金額が大きい場合には、実際に取得した遺産額のうち「1億6,000万円分 or 法定相続分」のどちらかまで控除できる制度があります。
この精度で控除できる金額は大きいため、一般的には「相続税がなくなる」といったケースがほとんどです。
ただし、相続税額が0円になっても相続税申告は必要です。
制度を利用できないケース
・法律上の婚姻関係がない妻や夫が相続する場合
・申告期限までに遺産分割協議が済んでいない場合
ケース② 「小規模宅地」などの特例
被相続人から住宅や事業所を相続する場合、評価額を最大80%まで削減できる制度です。
こちらも控除額が大きいため、利用することで相続税がかからないケースも多いでしょう。ただし、これによって相続税がなくなったとしても、相続税申告書を提出する必要があるため注意が必要です。
こちらの特例の適用要件は以下の通り。
特例が適用されるための条件
■配偶者:なし
■同居親族:申告期限までの宅地所有、居住継続が必要
■別居親族:配偶者や同居親族がいないこと、持ち家がないこと、申告期限までの宅地所有が必要等
ケース③ その他、条件次第で利用できる特例や控除
その他、条件次第で利用できる特例や控除もあります。
これらの控除はこれまで解説したものとは異なり、相続税がなくなった際には相続税の申告義務がありません。
控除の一例と相続税額から差し引ける控除額、適用条件は以下の通りです。
その他、特例の適用条件
■未成年者控除:18歳未満の法定相続人が利用可能な控除。控除額は「10万円×18歳になるまでの年数」。
■障害者控除:障害を持つ法定相続人が利用可能な控除。控除額は「10万円(特別障害者は20万円)×85歳になるまでの年数」。
■相次相続控除:10年以内に二次相続が起きた場合に利用可能な控除。一次相続で被相続人が納めた相続税額の一部を控除可能。
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「相続税」に対するお悩みはアイユーコンサルティング!
相続税が発生した際は、控除や特例を利用すれば、税額が大幅に下がる場合があります。
一方で、前提知識がないままで適用要件を確認したり、申告手続きをしたりするのは簡単ではありませんよね。
アイユーコンサルティングでは、以下の4つの方法で相続税対策をしています。
・納税財源確保対策
・財産移転対策
・遺産分割対策
・評価引き下げ対策
相続税対策には、的確な現状分析やスピーディーな対応が必要です。
アイユーコンサルティングは相続申告・相談累計4,350件の実績がある税理士事務所です。
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石塚 由紀 税理士
大学院卒業後、2009年に国内大手税理士法人の東京本社に入社し、26歳で税理士資格を取得。2011年には同税理士法人の福岡事務所に異動し、相続税申告、事業承継コンサルティング、上場企業対応、国際税務等、幅広い業務を経験し、セミナー講師や共著出版なども行う。 2016年に税理士法人アイユーコンサルティングに参画し、強みである資産税の知識を活かして相続・事業承継を中心としたコンサルティングを行う。ご家族の想いを第一に、遺産分割や生前対策のアドバイス、組織再編のご提案などお客様に満足いただける付加価値の高いサービスを提供。 2018年に娘を出産し、現在は仕事と子育ての両立に奮闘中。より広い視野をもち、信頼できる親しみやすい税理士を目指している。
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