相続税の申告は必要?申告前の準備や必要書類を徹底解説

相続税の申告は必要?申告前の準備や必要書類を徹底解説
松下 孝司 税理士
監修 税理士法人アイユーコンサルティング 福岡事務所/承継アドバイザリー部ゼネラルマネージャー

松下 孝司 税理士

大学卒業後、広島のIT企業のシステムエンジニアとして5年ほど従事。経営者と直接話せるような仕事がしたいとの想いから一念発起し、税理士を目指す。 2013年国内大手税理士法人に入社。東京本部にて、事業承継コンサルティング及び相続税申告、その他一般税務申告業務を担当。その後、同税理士法人福岡事務所に異動し上記業務に加え、財務・税務デューデリジェンス、中小企業投資減税サポート、補助金申請サポート等、幅広い業務を経験。 2022年7月、これまで培った知識経験をより活かすべく税理士法人アイユーコンサルティングにマネージャーとして入社。事業承継、相続の単なる専門家としてだけではなく、時代の流れ・要請を敏感に感じ取り、様々な角度から高付加価値な提案助言を行えるコンサルタント税理士を目指し、日々邁進している。

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相続税には誰もが利用できる「基礎控除」があります。相続財産の総額が基礎控除の金額より少なければ相続税はかからず、申告も不要です。したがって、納税義務の有無は基礎控除の金額と比較することで分かります。ここでは、相続税の計算方法や納税義務が生じるケースについて確認しましょう。

相続税の申告が必要な方

基礎控除は相続人全員の課税価格の合計額から差し引きます。他の控除は各人の相続税額が決定してからそれぞれ適用しますが、基礎控除は相続財産全体に対して利用できる控除です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で算出します。

 

相続財産から非課税財産や債務、葬式費用を差し引いた課税価格の合計額が基礎控除を上回る場合、その超えた金額に相続税がかかり、申告が必要です。

相続税の計算方法

相続税がかかると分かったときは、正確な金額が求められると申告までの流れがスムーズです。以下の事例について計算方法を確認しましょう。

 

・課税価格:1億円

・法定相続人:子2人

・法定相続分:1/2ずつ

・実際の取得割合:兄60%、弟40%

 

1.課税価格から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額を法定相続分で按分し、相続人それぞれの取得金額を算出する

基礎控除額=3,000万円+600万円×2人=4,200万円

それぞれの取得金額=(1億円-4,200万円)×1/2=2,900万円

 

2.「取得金額×税率-控除額」で、いったんの相続税額を計算する

取得金額が2,900万円の場合、税率は15%、控除額は50万円

いったんの相続税額=2,900万円×15%-50万円=385万円

 

3.相続税額の総額を求め、実際の取得割合で按分し、相続税額を算出する

総額=385万円×2人=770万円

兄の相続税額:770万円×60%=462万円

弟の相続税額:770万円×40%=308万円

相続税の申告要否検討表が届いた場合

相続税の申告要否検討表は、相続税が発生している可能性がある方に国税庁が送付する書類です。届いたからといって、必ずしも相続税の申告義務があるわけではありませんが、返送することで申告が必要かどうか確認できます。相続税の準備をしていない場合には、内容を記載して返送するとよいでしょう。なお、相続税申告をされる場合には返送不要です。

 

相続税の申告は、相続開始から10か月以内に完了するのが原則です。必要な申告や納税を怠ると税務調査が入り、最悪の場合、延滞税や加算税といったペナルティーが科せられる恐れがあります。

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相続税の申告はどのような段取りで進めるのか、イメージしにくいという方もいるでしょう。相続税の申告期限は相続開始から10か月しかありません。やることは多いため、できるだけ手際よく進めることが重要です。ここでは、申告までの流れやポイントを紹介します。事前に流れを確認することで、スムーズに手続きができるでしょう。

1.相続財産を全て洗い出す

身内が亡くなり相続が発生したら、まずは相続財産を全て洗い出します。預貯金や有価証券のようなプラスの財産だけでなく、ローンや借金といったマイナス財産も相続の対象です。また、見逃しがちな「みなし財産」も相続財産にカウントします。具体的な財産内容の例は以下の通りです。

 

財産 内容
プラス財産

・預貯金 ・有価証券 ・土地 ・建物 など

マイナス財産

・借金 ・ローン ・未払い金 など

みなし財産

・死亡保険金 ・死亡退職金 など

みなし財産は「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。また、一般的な葬式にかかる費用は相続財産から控除できます。

2.法定相続人が誰になるか確認する

続いて、法定相続人を確認しましょう。法定相続人とは法律で決まっている「財産を相続する権利がある人」のことです。配偶者は必ず法定相続人になり、それ以外は最も相続順位が高い方だけが法定相続人になります。

 

相続順位 法定相続人
1位 子(孫)
2位 父母(祖父母)
3位 兄弟姉妹(甥・姪)

※()の中は代襲相続人

 

配偶者以外に子がいるときは配偶者と子、子がいなければ父母、子も父母もいなければ兄弟姉妹が法定相続人です。なお、相続時に子が亡くなっていても、代襲相続人である孫がいれば孫が法定相続人になります。

3.相続方法を話し合う

相続財産や法定相続人が把握できたら、相続方法を決めましょう。相続方法には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類があります。プラス財産が多い場合、全ての相続財産を受け入れる単純承認を選ぶのが一般的です。特別な手続きは不要で、限定承認や相続放棄の手続きをしなければ自動的に単純承認になります。

 

一方、限定承認や相続放棄を選ぶときは、相続開始日から3か月以内に被相続人の住所地管轄の家庭裁判所への申述が必要です。借金やローンといったマイナス財産が多い場合、相続放棄を選択できます。限定承認は「財産の内訳がはっきりしていない」「マイナスの財産が多いが、手放せない財産もある」といった場合に有効です。

 

4.青色申告の届け出を行う

被相続人の事業を法定相続人が引き継ぐ場合で、亡くなったのが1月1日から8月31日までなら、4か月以内に税務署へ青色申告の届け出をする必要があります。9月1日から12月31日の場合は、相続開始を知った日によって期限が異なる決まりです。

 

青色申告は所得税の申告方法のひとつです。控除額が大きいため、事業者の多くは青色申告を利用しています。ただし、事業の規模が小さく、青色申告を利用しない場合は届け出なくても構いません。また、不動産所得や山林所得がある方も青色申告をしているケースがあるため、注意しましょう。

5.準確定申告を行う

被相続人に事業所得や不動産所得がある場合、相続が発生した日から原則4か月以内に準確定申告をします。準確定申告とは、法定相続人が亡くなった方の代わりに所得税の申告をすることです。通常の確定申告は2月から3月ですが、この時期を待たずに申告できます。

 

また、会社員のような給与所得者でも、源泉徴収された金額が多く還付を受けたい場合には申告しても問題ありません。

6.遺産の分け方を決める

遺産の分割方法を決める「遺産分割協議」も、相続が発生した日から10か月以内に終わらせましょう。法的に有効な遺言がない場合、遺産の分割割合は法定相続人全員で納得するまで話し合って決めます。

 

分け方が決まったら遺産分割協議書も必要です。誰がいくら遺産を受け継ぐか、具体的に明記して作成します。財産の名義変更や処分に必要な重要な書類です。忘れずに作成しましょう。

7.相続税の申告と納付

相続税の申告書を国税庁のホームページか税務署で手に入れ、必要事項を記載し提出します。被相続人の住所地の管轄税務署に持参するのも可能ですが、専担部署(センター)への郵送が基本です。相続発生日から10か月以内に申告しましょう。また、申告には以下の書類も必要になります。

 

・戸籍関係の資料

・財産についての資料

・本人確認書類

 

ただし、相続財産の金額や種類が多いと、申告に漏れや間違いがあるかもしれません。万が一、申告ミスがあると、税務調査が入り加算税が科せられる恐れがあります。申告が難しいと感じたら、無理せずに専門家である税理士に相談しましょう。

8.遺産の名義を変更する

相続税の申告と納付が完了したら、遺産分割協議書の記載通りに財産の名義をそれぞれの法定相続人に変更します。預貯金のような簡単なケースであれば、自分でも手続きできるでしょう。

 

ただし、不動産の名義変更は複雑で難しいといわれています。名義変更には明確な期限はありませんが、変更せずにいると、何らかの問題が発生した際にトラブルにつながるかもしれません。司法書士などの専門家に相談しながら確実に進めるとよいでしょう。

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相続税申告の際は、申告書と共に複数の書類を添付しなければなりません。書類に不備があると、10か月以内という期限に間に合わない恐れがあります。事前に必要な書類をしっかりと確認し、不備のないように努めましょう。ここでは、ケースごとに分けて、必要な書類を紹介します。

【共通】相続人であることが分かる公的書類

被相続人の戸籍謄本や申告者の本人確認書類が必要です。また、遺言や遺産分割協議書があれば、一緒に提出します。相続税申告で必要な公的書類は以下の通りです。

 

【被相続人に関する書類】

・出生から死亡まで連続した戸籍謄本

 

【法定相続人全員が提出する書類】

・戸籍謄本

・住民票

・マイナンバー(個人番号カードの表裏の写し又は通知カードの写しと本人確認書類)

・本人確認書類

・印鑑証明書(遺産分割協議書を作成する場合)

・遺言書のコビー(ある場合)

・遺産分割協議書のコピー

【共通】課税対象になる相続財産に関する書類

課税財産に関する書類は、相続財産の種類によって必要な書類が変わります。以下は、自分が用意しなければならない書類の参考例です。

 

財産の種類 必要書類
預貯金

・金融機関の残高証明書(相続発生日時点のもの)

・定期預金は解約既経過利子の計算明細書

・通帳のコピー(残高証明書の提出があれば不要)

不動産

・登記簿謄本(全部事項証明書)

・固定資産税納税通知書(相続発生年度分)

・賃貸借契約書

有価証券

・証券会社の残高証明書(相続発生日時点のもの)

・配当金の支払通知書

生命保険 ・保険金の支払通知書
その他

・自動車:車検証

・贈与税:贈与税申告書

・死亡退職金:退職金の源泉徴収票

【共通】非課税財産やマイナス財産に関する書類

債務や葬式費用を相続財産から差し引くには、請求書や領収書といった書類の提出が必要です。葬式で僧侶に渡すお布施や心付けのような領収書の用意が難しいものは、申告のためにメモを取っておくとよいでしょう。

 

財産の種類 必要書類
債務 ・残高証明書(相続発生日時点のもの)

・未払いの請求書(医療費の請求書など)

葬式費用 ・葬儀会館からの領収書

・お布施や心づけのメモ(支払日・支出先・支払金額)

【ケース1】小規模宅地等の特例を利用する場合

被相続人が使用していた自宅や事業所を法定相続人が受け継ぐ場合に利用できる特例が「小規模宅地等の特例」です。特例を利用することで、評価額を最大80%圧縮できます。適用する際に提出するのは、基本的に公的書類や財産に関する書類のみで構いません。ただし、場合によっては以下の書類が必要です。

 

【家なき子制度を利用し3年以上借家に暮らしていた法定相続人が相続する場合】

・法定相続人の戸籍の附票

・相続人の戸籍の附票の写し(原本)

・法定相続人の自宅の登記簿謄本

 

【被相続人が自宅ではなく老人ホームにいた場合】

・被相続人の戸籍の附票

・施設の契約書

・介護保険の被保険者証の写し(又は、障害者福祉サービス受給者証の写し)

【ケース2】配偶者の税額の軽減を利用する場合

配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円もしくは法定相続分までは相続税が課税されない制度が配偶者の税額の軽減です。戸籍上の配偶者のみが利用でき、公的書類や財産に関する書類の他に必要な書類は特にありません。

 

ただし、配偶者控除を利用して相続税が0円になったとしても相続税の申告は必要です。相続税がかからなくても申告を忘れないように気を付けましょう。

【ケース3】生前贈与を行った場合

被相続人が亡くなる3年以内(※)に贈与を受けていた場合にも、相続税の申告時に別途書類の提出が必要です。公的書類や財産に関する書類の他に、贈与税申告書や贈与契約書を提出しましょう。

※税制改正により、令和6年1月1日以降の贈与の場合、相続開始前7年以内まで相続税の課税対象になります。詳細は、下記の弊社ブログにて解説しております。
参考:2023年度税制改正で贈与加算期間が延長!

 

また、相続税に使用できる特例や控除は他にもあります。利用した制度に合わせて書類を用意する必要があるため、詳しくは国税庁ホームページのチェックシートを参考にしてみてください。

 

(参考: 『相続税の申告のためのチェックシート|国税庁』

 

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相続税申告の際には、添付書類以外にも気を付けたいポイントがあります。申告準備は簡単にできるケースもありますが、自分で計算することや漏れなく申告することが難しいと感じるかもしれません。ここで紹介する3つのポイントを意識しながら、慎重に準備を進めましょう。

土地の相続税路線価が出るのは7月

相続財産に土地がある場合、公的な価格を参考にして評価額を求めます。以下の4種類のうち、相続税額の算出で利用するのは「相続税路線価」です。

 

公示価格 基準地価 固定資産税評価額 相続税路線価
機関 国土交通省 都道府県 市町村 国税庁
基準日 1月1日(毎年) 7月1日(毎年) 1月1日(3年に1度) 1月1日(毎年)
公表時期 3月下旬 9月下旬 3月もしくは4月 7月初旬

 

相続税路線価の公表時期は毎年7月初旬です。

申告期限を過ぎたらペナルティーあり

申告期限である10か月以内に申告できなかった場合、無申告加算税や延滞税といったペナルティーが発生する恐れがあるため、気を付けましょう。延滞税は日割り計算で、申告が遅れればその分金額も増えます。無申告加算税の税率は状況や相続税額によって異なりますが、最大20%です。

 

申告期限を過ぎると、通常であれば適用できた控除や特例も受けられません。相続財産の洗い出しが終わらずに申告が遅れそうなときは、一度仮の金額で申告するとよいでしょう。

 

また、遺産分割協議が終了していない場合、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して対応します。状況が落ち着いてから修正申告や更正の請求することで、差額分の追納や還付の請求も可能です。

 

不備があると税務調査が入る可能性も

期限までに申告しても計算ミスや財産の申告漏れがあると、税務調査が入りペナルティーが科せられる恐れがあります。申告内容に不備があった場合、過少申告加算税や重加算税に加えて、刑事罰が科せられることがあるため注意が必要です。

 

特に、財産が多い方や生前贈与があった方は税務調査の対象になりやすい傾向があります。不備のない申告のためには、専門知識を持った税理士に相談しましょう。

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通常10%程度といわれている相続税申告の税務調査率ですが、アイユーコンサルティングでは1%未満と低い割合を誇ります。アイユーコンサルティングは相続・承継案件に特化しているからこそ、ひとりひとりのお客様に対して、丁寧でありながらもスピーディーな対応が可能です。

 

また、アイユーコンサルティングでは初回相談を無料で受け付けています。「相続税の申告について質問がある」「相続税申告に不安を感じている」など、少しでも気になることがあればお気軽にご相談ください。土日祝日や平日夜でも相談は可能です。空いた時間ができた際に、いつでもご連絡いただけます。

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相続税の申告は正しい手順に沿って慎重に進めましょう。特に、相続放棄や限定承認は相続開始から3か月以内、申告や納付は10か月以内と期限があるため注意しなければなりません。申告期限を過ぎたり申告内容に不備があったりすると、ペナルティーが発生する恐れがあります。

 

身内の方が亡くなって相続税が課されるときは、専門知識を持った相続の専門家に相談するとよいでしょう。アイユーコンサルティングは初回相談が無料です。自宅からお気軽に相談できるWEB面談も実施しています。相続税にお困りの際はぜひご相談ください。

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