投稿日:2021.05.11 最終更新日:2023.11.21
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石塚 由紀 税理士
大学院卒業後、2009年に国内大手税理士法人の東京本社に入社し、26歳で税理士資格を取得。2011年には同税理士法人の福岡事務所に異動し、相続税申告、事業承継コンサルティング、上場企業対応、国際税務等、幅広い業務を経験し、セミナー講師や共著出版なども行う。 2016年に税理士法人アイユーコンサルティングに参画し、強みである資産税の知識を活かして相続・事業承継を中心としたコンサルティングを行う。ご家族の想いを第一に、遺産分割や生前対策のアドバイス、組織再編のご提案などお客様に満足いただける付加価値の高いサービスを提供。 2018年に娘を出産し、現在は仕事と子育ての両立に奮闘中。より広い視野をもち、信頼できる親しみやすい税理士を目指している。
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不動産にかかる相続税の基本知識
相続が発生すると、葬儀や生命保険の請求、亡くなった方が利用していた各種サービス解約など、多くの手続きと並行して相続税の申告を行わなければなりません。手続きをスムーズに進められるように、ここでは、相続手続きのおおまかな流れと相続税の基本的な計算方法を解説します。
相続手続きの流れ
相続発生から完了まで、一般的にどのような流れで進行するのかを知っておくと安心です。以下に相続手続きの流れをまとめました。
手続き | 内容・備考 |
---|---|
1.遺言書の有無の確認 | 自筆での遺言書があれば家庭裁判所で検認を受け開封する |
2.おおまかな財産の把握 | 遺産や債務の概要を把握し、相続または相続放棄をするか決定する ※相続放棄・限定承認をする場合は、 家庭裁判所に申述する |
3. 相続人の確認 | 被相続人と相続人の本籍地からそれぞれ戸籍謄本を取り寄せる |
4. 準確定申告(必要なとき) | 被相続人の確定申告が必要な場合、相続人が代わって申告する |
5. 財産の調査 | 被相続人の遺産や債務を調査する |
6. 遺産の評価・鑑定 | それぞれの財産を決められた方法で評価する |
7. 遺産分割協議書の作成 | 相続人全員の実印と印鑑証明が必要 |
8. 相続税申告書の作成 | 納税資金の準備をする |
9. 相続税の申告と納税 | 被相続人死亡時の住所地の税務署に申告・納税する |
10. 遺産名義変更手続き | 不動産の相続登記や、預貯金などの名義替えをする |
相続税の計算方法
相続税とは、被相続人から財産を相続した人にかかる税金です。被相続人が持っていた財産から、相続税非課税の財産や債務・葬式費用などを差し引いた価格に対してかかります。
なお、相続税には「この金額までは相続税がかからない」という基礎控除があります。基礎控除額の計算式は以下の通りです。なお、相続財産の課税価格が基礎控除額以下の場合、相続税は発生しません。
- 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税額は、次の流れで計算します。
【ステップ1】相続税の対象となる財産の総額を算出する
被相続人の残した財産の全てが相続税の対象になるわけではありません。課税対象となる財産の範囲から非課税財産や債務などを除き、基礎控除額をさらに引いて課税遺産総額を算出します。
1.相続税の課税対象になる財産-(非課税財産+債務+葬式費用)=相続税の課税価格
2.相続税の課税価格-基礎控除額=課税遺産総額
【ステップ2】仮の相続税額を計算
相続税の税額を計算するために、まず「相続税の総額」を算出します。「相続税の総額」は、実際の遺産分割の内容にかかわらず、法定相続分を用いて算出することがポイントです。
3.課税遺産総額×法定相続分×税率=各人の仮の相続税額
4.各人の仮の相続税額を合算=相続税の総額
【ステップ3】実際の相続税額を計算
各人が納める実際の相続税額は、相続税の総額を各人が実際に取得した遺産額の割合で按分して算出します。最後に、税額控除が受けられる場合には差し引きましょう。
5.相続税の総額×(各相続人が相続する課税価格÷課税価格の合計額)-税額控除=各人の実際の相続税額
相続税の計算には評価額の算出が必要
相続税の金額を計算するためには、相続税の課税対象となる財産の価格を算出する必要があります。相続する財産をお金に換算した場合いくらに評価されるのか、法律上のきまりに従って計算しなければなりません。
多くの場合、現金と預貯金以外の財産の評価額を、知識のない方が正しく計算することは難しいでしょう。特に土地などの不動産は現地での測量が必要なケースもあります。相続する財産に土地や建物が含まれるときは、相続税に強い税理士への依頼が確実です。
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不動産の相続税評価額の算出方法
ここでは、不動産の相続税評価額の算出方法を土地・建物に分けて解説します。それぞれの評価方法について理解を深めましょう。土地の評価額は、路線価方式または倍率方式によって算出されます。路線価が定められている地域であれば路線価を用い、その他の土地については倍率方式が用いられることを押さえておきましょう。
路線価方式による土地の評価方法
路線価方式とは、路線価が定められている土地の評価方法です。路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地における1平方メートルあたりの価額のことで、国税庁ホームページの「路線価図」で確認できます。
「路線価図」で該当する土地に面する道路の路線価格(単位:千円)を調べ、路線価格に土地の面積を乗じることで、おおよその相続税評価額がわかる仕組みです。以下に具体例を挙げます。
- 土地(100平方メートル)に面する路線に「450C」と記載されていた場合
土地面積100平方メートル×路線価格450千円=4,500万円
※4,500万円がおおよその相続税評価額
なお、数字の後ろのアルファベットは貸地の場合に使用します。貸地であればAからGの記号によって、評価額から一定額を減額できます。
(参考: 『国税庁 路線価図』)
倍率方式による土地の評価方法
倍率方式は、路線価が設定されていない、主に郊外の土地の評価方法です。倍率方式では、該当する土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。なお、計算に使用する固定資産税評価額は、被相続人の亡くなった日の属する年度のものであることを確認しましょう。以下が計算例です。
- 固定資産税評価額が800万円、倍率が1.1倍の土地の場合
800万円×1.1=880万円
※880万円が相続税評価額です。
(参考: 『土地家屋の評価|国税庁』)
いびつな形の土地は評価額が下がる
評価額を路線価方式で算出する際、形がいびつで使い勝手の悪い土地であれば評価額が下がります。ここでは、いびつな形の土地として3つの例を取り上げて解説します。
不整形地
長方形や正方形に整った土地を「整形地」と呼ぶのに対し、三角形やL字型など使いづらい形状の土地が不整形地です。不整形の程度によって評価額が減額されます。
間口が狭い
土地の間口(道路に接している部分)が過剰に狭い場合、評価額を減額できます。普通住宅であれば、間口8メートル未満からが対象です。
奥行きが長い
間口の広さに対して奥行きが過剰に長い土地の場合、評価額を減額できます。具体的には、奥行きが間口の2倍以上の土地が該当します。
建物の評価方法
建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同額です。厳密には、固定資産税評価額に倍率1.0を乗じて算出します。固定資産税の納付時期に払込用紙と一緒に送られてくる「固定資産税課税明細書」で確認しましょう。
なお、賃貸している建物(貸家)は所有者が自由に利用できないため、自宅として使用する建物と比べて低い価額で評価することが特徴的です。貸家の相続税評価額は、建物の固定資産税評価額から借家権に相当する分を差し引きます。
計算の際に用いる借家権割合とは、その土地の権利のうち、借地の権利が何割を占めるかを示す数字のことで、全国一律30%です。
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不動産の相続税が軽減される特例と税額控除
実際に相続税額を計算してみて、「思いのほか高くなりそう」と感じる方もいるのではないでしょうか。ここでは、土地の評価額を減額できる小規模宅地等の特例と、各人の相続税額から一定額を控除できる制度(税額控除)を紹介します。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人または被相続人と生計を一にする親族の「居住用・事業用に供されていた宅地等」を相続によって取得する場合、一定の適用要件を満たしていれば土地の評価額を最大80%減額できる制度です。ただし減額の対象は「土地のみ(マンションであれば敷地権)」であり、建物には適用できません。
小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は4種類です。被相続人が宅地をどのように利用していたのかによって、上限面積や減額割合が異なります。
種類 | 使用例 | 上限面積 | 減額割合 |
---|---|---|---|
特定居住用宅地等 | 戸建てや分譲マンションなどの自宅 | 330平方メートル | 80% |
貸付事業用宅地等 | 賃貸マンションやアパートなど、 事業として不動産貸付けを行っている宅地 |
200平方メートル | 50% |
特定事業用宅地等 | 個人商店の店舗や個人事務所など、 貸付け以外の事業で使用している宅地 |
400平方メートル | 80% |
特定同族会社事業用宅地等 | 被相続人が経営する企業に貸していた宅地 | 400平方メートル | 80% |
配偶者の税額軽減は最高1億6,000万円
配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続によって取得した遺産の額が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額まで、配偶者に相続税がかからない制度です。
たとえ配偶者の法定相続分相当額が10億円あった場合でも、10億円分の財産までは相続税がかかりません。配偶者の税額軽減制度を使えば、配偶者の相続税はゼロになるケースが大半であるといえるでしょう。
なお、法定相続分とは民法に定められた相続割合を指し、相続税を計算する上で必要です。配偶者の法定相続分は次のように定められています。
相続人 | 配偶者の法定相続分 |
---|---|
配偶者と子供 | 財産の1/2 |
配偶者と父母など直系尊属 | 財産の2/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 財産の3/4 |
(参考: 『配偶者の税額の軽減|国税庁』)
贈与税額控除
相続によって財産を取得した人が、被相続人から亡くなった日より3年以内に財産の贈与を受けたときには、相続税の課税価格に贈与を受けた財産を加算します。贈与税額控除とは、加算された贈与財産に対応する贈与税の額が、加算された人の相続税の計算上、控除される制度です。
亡くなった日から3年以内であれば、贈与税がかかったかどうかに関係なく加算されることに注意しましょう。贈与税(暦年課税)の基礎控除額である110万円以下の贈与財産や亡くなった年に贈与された財産の価額も加算対象になります。
(参考: 『贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁』)
未成年者控除
相続人が未成年者のときは、相続税の額から一定の金額が差し引かれます。未成年者控除を受けられる人の要件は、次の3つです。
- 財産を取得したときに日本国内に住所がある人
- 財産を取得したときに20歳未満である人
- 財産を取得した人が法定相続人であること
未成年者控除の額は、その未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円で計算します。計算式は以下の通りです。
(20歳-相続時の年齢)×10万円
なお、令和4年4月1日以後の相続については、未成年者控除の対象が20歳から18歳に引き下げられます。
(参考: 『未成年者の税額控除|国税庁』 )
障害者控除
85歳未満の障害者が相続人となる場合に適用されます。障害者控除を受けられる人の要件は、次の3つです。
- 財産を取得したときに日本国内に住所がある人
- 相続や遺贈で財産を取得したときに障害者である人
- 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人
障害者控除の額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。特別障害者の場合は1年につき20万円です。控除額は以下の通り計算します。
一般障害者 (85歳-相続時の年齢)×10万円
特別障害者 (85歳-相続時の年齢)×20万円
障害者控除額がその障害者本人の相続税額より大きいため、控除額の全額が引き切れない場合には、引き切れない金額分をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引けます。
(参考: 『障害者の税額控除|国税庁』 )
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不動産相続で相続税以外に発生する費用
相続時に必要な費用は相続税だけではありません。不動産の相続登記時に発生する登録免許税や戸籍謄本など必要書類の交付手数料、状況に応じて司法書士手数料も発生します。具体的な内容を把握しておきましょう。ここでは、不動産相続で相続税以外に発生する費用について解説します。
登録免許税は必ずかかる
相続で取得した不動産の名義変更手続きが「相続登記」です。法務局で相続登記の手続きをする際に、登録免許税が発生します。登録免許税の金額は、相続登記の対象になる不動産の固定資産税評価額の0.4%です。以下に計算例を挙げます。
- 固定資産税評価額が2,000万円の土地と300万円の家屋の相続登記をする場合
(2,000万円+300万円)×0.4%=9万2,000円
※9万2,000円が登録免許税の金額
必要に応じて司法書士手数料が発生
不動産の相続登記の手続きは個人でもできますが、司法書士に依頼もできます。「忙しくて時間がない」「土地の権利関係が複雑である」など、自分でできるか不安な方は、依頼することで手続きにかかる手間を軽減できるでしょう。なお、相続登記を司法書士に依頼する際の平均的な相場は、10万円前後です。
必要書類の取得費用も
相続登記にあたっては、さまざまな必要書類の取得費用も発生します。必要書類の一般的な取得費用は次の通りです。※戸籍謄本取得費用などは地域により異なる
- 不動産の登記事項証明書:1通600円
- 戸籍謄本:1通450円
- 除籍謄本:1通750円
- 住民票:1通300円
- 住民票の除票:1通300円
- 印鑑証明書(遺産分割協議書添付用): 1通300円
- 固定資産評価証明書:1件400円(2件目以降は1件につき100円)
不動産取得税は不要
不動産取得税は、土地や建物を購入したり建物を建築したりして不動産を取得したときに取得者に課税される税金です。登記の有無や取得の理由を問わず、贈与や交換で取得した場合に納める必要があります。不動産取得税は、生きている人からの不動産を取得したときに課される税金であり、相続では発生しません。
なお相続時精算課税制度では、生前、相続が発生する前に不動産を贈与するため、贈与扱いとなります。この場合、不動産取得税が発生することに注意しましょう。
相続税申告の注意点
特例や税額控除を受けて相続税の納税が不要になった場合でも、申告書の提出が必要になるケースがあります。また、申告期限を過ぎると、加算税や延滞税といった罰金が発生するため注意が必要です。ここでは、相続税申告についての注意点を解説します。
特例や税額控除で相続税がゼロ円でも申告は必要
相続税がゼロ円であっても、相続税申告書の提出が必要なケースがあります。「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の特例」の控除を受けて相続税の納税が不要になった場合には、制度の適用を受けるために申告書の提出が必要です。
なお、課税価格が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えず相続税が発生しない場合、相続税申告書の提出は必要ありません。
相続税には申告期限や納付期限がある
相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。また、相続税の納付期限も申告期限と同日です。申告期限を過ぎると、罰金が科されたり税額軽減効果のある特例が使えなくなったりと、ペナルティーを受けることを覚えておきましょう。
期限までに申告することが難しいと感じた場合には、できるだけ早く、相続税に精通した税理士に相談することをおすすめします。
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【事例紹介】780万円の相続税がゼロ円に!
小規模宅地等の特例を利用し、相続税780万円をゼロ円まで減額できたOさんのケースです。
【Oさん】
- 年齢:70歳
- 居住地:福岡
- 家族構成:子供3人
- 総資産:1億1,000万円
(内訳:土地8,000万円 建物500万円 預貯金2,500万円)
小規模宅地等の特例を利用し、土地の評価額を8,000万円から80%減の1,600万円まで切り下げられました。資産総額の評価額は4,600万円まで下がり基礎控除以下となったため、相続税の納税は不要です。
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まとめ
石塚 由紀 税理士
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