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【税務】税制改正大綱発表

こんにちは

福岡市・北九州市・関東に事務所を構える相続・事業承継に強い税理士法人アイユーコンサルティングです。

 

12月14日に税制改正大綱が発表されました。

今回の改正の主な概要は以下のとおりです。

種類 目的 内容 増税/減税
個人所得課税 様々な形で働く人をあまねく応援し、「働き方改革」を後押し 給与所得控除・公的年金等控除の制度の見直しを図り、一部基礎控除に振り替える 高所得者増税
法人課税 生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押し 特別償却・税額控除等の税制上の措置を講ずる 減税
資産課税 中小企業の代替わりを促進 事業承継税制を10年間の特例措置として抜本的に拡充する 減税
適正・公平な課税の実現

 

一般社団法人・一般財団法人に財産を移転することによる課税逃れを防止する 増税
小規模宅地等の特例の本来の趣旨を逸脱した悪用を防止する 増税
その他 観光立国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図る 国際観光旅客税(仮称)を創設 増税
温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図る 森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)を創設 増税
ICTの積極的な活用 税務手続きの電子化等を推進 -
財政物資として たばこ税の税率引き上げ 増税

 

以下、個人所得課税、法人課税、資産課税の主な改正内容をご紹介します。

 

1.個人所得課税

(1)各種控除の見直し(H32~)

給与所得控除 ■   控除額を一律10万円引き下げ

■   給与収入が850万円を超える場合、控除額を195万円に引き下げ

ただし、特別障害者に該当する者や、23歳未満の扶養親族や特別障害者が同一生計内にいる者は、負担増が生じないよう措置がとられる。

<影響>

850万以下:影響なし

900万円 :1.6万円(介護・子育て世帯は影響なし)

1,000万円:5.0万円(介護・子育て世帯は影響なし)

1,200万円:6.6万円(介護・子育て世帯は影響なし)

公的年金等控除 ■   控除額を一律10万円引き下げ

■   公的年金等収入が1,000万円を超える場合、控除額に上限(195.5万円)

■   公的年金等収入以外の所得金額が1,000万円を超える場合は控除額を10万円引下げ、2,000万円を超える場合は控除額を20万円引き下げ

基礎控除 ■   控除額を一律10万円引き上げ

■   所得金額2,400万円超から逓減し、2,500万円超は基礎控除の適用なし

青色申告特別控除 ■    控除額を一律10万円引き下げ(65万→55万)

ただし、帳簿の電磁的記録等による保存又は電子申告をする場合は、現行と同様、控除額は65万

給与所得控除は平成26年の改正でも上限が見直しされており、今回はさらなる控除額の上限の引下げです。公的年金等控除に関しては、公的年金等収入が1,000万円を超える者はほとんどいないため、多くの場合影響はないと考えられます。ただし、公的年金以外の所得が1,000万円を超える高所得者は税負担が増加します。

人的控除の見直しは今後も続くことが想定されており、高所得者に対する増税が強化する傾向にあります。

 

2.法人課税

大企業向けの改正は省略します。

(1)所得拡大促進税制の改組(H30.4~H33.3)

賃上げを行った場合、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができる制度が改正されます。

 

中小企業の所得拡大促進税制(大企業は省略)

要件 1人あたりの平均給与支給額 ≧ 前期の1人あたり平均給与支給額×101.5%
控除額 給与等支給増加額×15%※(法人税額の20%を限度

※次のいずれも要件を満たすときは25%

①1人あたり平均給与≧前期の1人あたり平均給与×102.5%

②次のいずれかを満たす

イ:適用年度の教育訓練費 ≧ 前期の教育訓練費×110%

ロ:適用年度終了の日までに、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、

その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明されたこと

 

(参考)現行

要件 ①雇用給与支給額 ≧ 基準雇用給与等支給額×103%

②雇用者給与等支給額 ≧ 前期の雇用者給与等支給額

③1人あたりの平均給与支給額 > 前期の1人あたり平均給与支給額

控除額 ①+②(法人税額の20%を限度)

①給与等支給増加額×10%

②(給与等支給額-前期の給与等支給額)×2%※

(給与等支給増加額×2%又は12%を限度)

※平均給与等支給額 ≧ 前期の平均給与等支給額×102%の場合、12%

適用要件が簡素化され、1人あたり平均給与の増加のみが要求されます。なお、平均給与の算定は以前と異なり、適用年度と前期の全期間の各月において給与等の支給がある一定の雇用者で算定される予定です。

 

(2)組織再編税制

① 自社株式を対価とする株式取得(TOB)の円滑化措置の創設

株式買収の際に、自社株式を対価とするTOBに応じた株主の株式譲渡所得の課税が繰延となります。株主は株式が変わるだけでキャッシュが入ってこないためです。

② スピンオフ税制の見直し

平成29年度税制改正で創設されたスピンオフ税制について、新設分割だけでなく吸収分割も可能となります。

③ 従業者引継要件及び事業継続要件の見直し

従業者引継要件及び事業継続要件を適格要件とする組織再編を行った場合において、その後に完全支配関係にある法人間での従業者又は事業の移転する際、当初の適格判定は充足するものとされます。

 

3.資産課税

(1)事業承継税制の特例の創設(H30.4~)

現在の事業承継税制とは別に、承継を促進するための10年間の特例措置として、新しい制度が創設されます。主な現行との相違点は以下のとおりです。

内容 現行制度 特例制度
対象株式 発行済株式×2/3 全株式
猶予額 贈与は100%、相続は80% 贈与・相続とも100%
雇用確保要件 平均8割維持 平均8割維持できなくても理由を記載した書類を提出すれば猶予が継続できる
承継パターン 先代経営者1人から、後継者1人へ 複数人(代表者以外も含む)からの承継、代表権を有する複数の後継者への承継も可能となる
譲渡・合併・解散等(経営環境の変化) 猶予税額を納付 一定の要件(業績悪化等)を満たせば、一部減免措置あり
相続時精算課税制度の適用 20歳以上の直系卑属(子又は孫) 推定相続人以外の後継者も可能に

特例制度を適用するためには、特例承継計画(認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた計画で、承継時までの経営見通し等が記載されたもの)を平成30年4月1日から平成35年3月31日までに都道府県に提出して認定を受ける必要があります。

<後継者の要件>

  • 特例承継計画に記載された代表権を有する者
  • 同族関係者と併せて議決権の過半数を有する者
  • 同族関係者のうち、議決権を最も多く有する者
  • 後継者が2名又は3名以上の場合には、議決権数が上位2名又は3名の者(議決権10%以上有するものに限る)

 

大幅に要件が緩和されるため、利用件数は増加するものと考えられます。10年間の時限措置なので、特例制度を利用すべきか否か検討してみてはいかがでしょうか。

 

(2)一般社団法人等の相続税課税(H30.4~)

一般社団法人等の役員(理事)が死亡した場合に、一般社団法人等に相続税が課税されるようになります。

課税される対象 「相続開始直前」又は「相続開始前5年以内のうち合計3年以上の期間」のいずれかにおいて、同族役員数が1/2超
課税される相続税額  「一般社団法人等の純資産額/役員死亡時の同族役員(被相続人を含む)の数」を一般社団法人が遺贈により取得したものとみなして課税

一般社団法人には持分が存在しないため、一族で実質的に支配する一般社団法人に財産を移転することで、無税で財産が承継される課税逃れを防止するための改正です。

改正案は、役員死亡時の同族役員数によって、相続税が異なる仕組みとなっています。適用時期は平成30年4月1日以後ですが、平成30年3月31日までに設立された一般社団法人は、平成33年4月1日以後に適用されることになります。

 

(3)小規模宅地等の特例の見直し(H30.4~)

居住用と貸付用の特例について、以下のとおり改正されます。

1.被相続人の居住用宅地の減額特例(330㎡まで80%評価を減額できる特例)

取得する者 現行 改正案
①配偶者 - -
②同居親族 申告期限まで所有・居住 同左
③別居親族 イ)配偶者・同居親族がいない

ロ)相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者が所有する家屋に居住したことがない

 

イ)同左

ロ)相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者、3親等内の親族特別の関係のある法人が所有する家屋に居住したことがない

ハ)相続開始前に居住していた家屋を過去に所有していたことがない

別居親族の要件を満たすために、生前に自宅を同族会社等に売却しておくなど、本来の特例の趣旨を逸脱した悪用を防止するための改正です。しかし、次のようなケースも適用できなくなるため注意が必要です。

例1)持ち家のない孫等に遺贈

改正後は孫が子(相続人)所有の家屋に居住している場合、適用できません。

例2)被相続人に建ててもらった家屋に相続人が居住

改正後は被相続人の居住用宅地について、特例が適用できません。

 

2.被相続人の貸付用宅地の減額特例(200㎡まで50%評価を減額できる特例)

現行 改正案
申告期限まで貸付事業を継続・所有

 

 

同左

相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等は除外(ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている場合を除く)

短期的な相続対策のための不動産購入は税効果が減少します。ただし、貸家建付地等の評価方法は変わりないため、効果がなくなるわけではありません。なお、平成30年3月31日までに貸付事業の用に供されるものは、今までどおり特例も適用できます。

 

(4)相続時の登録免許税の減免

数次相続で登記が放置されている土地や、相続登記を促進すべき地域における少額土地(1筆10万以下)について、登記に係る登録免許税が減免されます。

 

(5)納税義務者の範囲見直し

日本に長期間住所を有していた外国人が出国後に行った相続・贈与に対して国外財産を含めて相続税等を課税する現行制度が見直されます。一時的に国外に住所を移した後に贈与を行う場合を除き、外国人が出国後に行った相続・贈与については、原則、国外財産を課税対象としないこととされます。

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